新型コロナウイルス患者数増加に伴う透析施設における対応についてのお願い

日頃より両会の運営にご協力賜り誠にありがとうございます。
ご承知の通り、いわゆる第5波ではワクチン未接種の50歳代以下の世代を中心に感染者が爆発的に増加しており、既に大阪府下の軽症中等症病床は使用率が60%を越えかつ増え続けている状況です。また8月に入り透析患者の陽性者も大阪市内を中心に増加しております。
新型コロナウイルス陽性透析患者は、無症状病原体保有者および軽症患者であっても、透析患者は自宅療養の対象からは除外され、ウイルス検査陽性の透析患者は原則入院対応となっており、これまで行政にも支援頂き、大阪府下において透析患者対応の病床を一定数確保しておりますが、一般の患者の急速な増加により、その病床も厳しい状況になっております。
首都圏の医療の現状を考慮すると、今後重症化しても転院先が見つからない可能性、更にCOVID-19に限らず救急を要する病状にも対応できない、いわゆる医療崩壊の状況になることも十分考えられます。
大阪透析研究会および大阪透析医会は、大阪府の担当者と連携しながら透析対応の病床確保に今後も努めてまいりますが、各透析医療施設におかれましては、このような現状を 十分にご理解いただいて、透析患者における感染の急増を防止する観点から、以下について対応および徹底をお願いいたします。

 

  1. 透析患者および透析患者の家族を含むワクチン接種の推進
    第5波においては、現状のような感染者の爆発的増加の状況においても60歳代以上の感染者は激減しており、これは高齢者において希望者のワクチン接種がほぼ完了したことが理由と考えられます。
    令和3年7月16日付けで厚生労働省健康局健康課予防接種室から、各都道府県・市町村等あてに、透析患者は基礎疾患を有する者として新型コロナワクチンの優先接種の対象であることから、透析医療機関での円滑なワクチン接種体制の確保が図られるようご協力願いたい旨の通知が発出されました。必要に応じ行政に要請して、65歳未満の透析患者にも積極的なワクチン接種をお願いします。また、第5波では家庭内感染が増加していますので、透析患者の 家族にも積極的なワクチン接種をお願いします。
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  3. 感染疑い例への積極的なスクリーニング検査と隔離透析
    第3波や第4波での透析施設のクラスター発生原因に、健康状態の把握の不備と考えられる事例があったようです。送迎バスへの乗車や透析室への入室の前に必ず健康状態の把握を行ってください。発熱や咳など症状のある方には、事前に透析施設への連絡を行うように指導して、症状がある方には積極的なPCR検査や抗原検査によるスクリーニングと積極的な隔離透析を行うようにしてください。
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  5. 自施設でのCOVID-19透析患者の透析体制の構築
    感染疑い患者や感染患者が発生した場合、自施設での透析予定日にも関わらず、透析を施行せずに入院調整を待つ、あるいは3日以上空きの透析を予定するなどの施設が見受けられます。このような事例は、肺炎のみならず溢水による重症化の危険性も増加し、入院透析施設での緊急透析や夜間透析などの負担増、また施設によっては受け入れが困難とされる可能性もあります。
    今後、感染状況の悪化に伴い、透析患者は入院という原則が保てず、入院が決まるまでの間、自施設での透析をお願いする症例が増加すると思われます。入院病床の有無にかかわらず自施設での個室隔離透析または空間的な隔離、時間的な隔離での透析が行える体制を速やかに構築してください。
    また今後、更に病床が逼迫してきた場合、自施設のCOVID-19透析患者の転院が困難になる可能性がありますので、病院においては協力医療機関への手上げの検討をお願いします。

 

大阪透析研究会
会長 武本 佳昭
大阪透析医会
会長 山川 智之